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2016年10月31日 (月)

超短編小説「陽だまり」

 その絵を見た瞬間、私は思わず懐かしいと思った。

 「放課後」と名付けられたその絵には女子高校生が描かれていた。

 

 澄んだ眼差し、ふっくらとした頬、肩まであるさらさらした黒髪、
 昔、私がなりたくてもなれなかった女の子そのものだった。

 女の子は今にも微笑みそうだ。
 白と黒の絵の世界にいるのに、
 私にはその薄いピンク色のリップクリームを塗った唇も
 着ている制服の色もくっきりと思い浮かべることが出来た。

 その女子高校生にはきっと羽が生えている。
 私たちがとうに失くしてしまった羽。
 どこにでも飛んでいける、そしてどこにでも舞い降りることのできる羽。

 陽だまりの中で微笑む彼女は色彩を持って私の瞳を覗き込んでいる。

 「その羽を大事にしてね」
 そっと心の中で私は彼女に話しかける。
 「純粋な気持ちをいつまでも忘れないでね」
 「瞳の輝きを忘れないでね」
 「いつまでも、素直な心を持っていてね」
 「なぜなら、あなたは私がなりたくても決してなれなかった理想の女の子なのだから」



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